2010年8月7日土曜日

公共事業でエネルギー大国をめざせ

日本のエネルギー自給率は何と4%しかありません。つまり日本は石油、石炭、天然ガス、ウランなどエネルギーを生み出す資源のほぼすべてを外国からの輸入に依存しているのです。これは非常に大きなリスクです。エネルギー自給率を高める事が急務の課題なのです。そしてデフレで生産力が余っている今こそそのチャンスなのです。

公共事業が「無駄である」としてマスコミで繰り返し報じられたためか、公共事業が何か悪い物であるかのような印象を持つ方も多いのではないでしょうか。確かに自民党の時代に漫然と行われて来た公共工事は、本当に日本を豊かにするというよりも地方へ所得を再配分する意味合いが強く、さらにはそれを通じて政治家や官僚と企業が癒着するなど、献金、天下り、談合の温床となったことから、公共事業への人々のイメージは良いものではありません。車の走らない道路や飛行機の飛ばない飛行場、コンクリートで固められた海岸線など誰がみても「無駄」と思えるような工事があまりにも多すぎました。だからと言って公共事業=無駄で削減すべきもの、という単純な結論は早計です。本当にきちんと日本のことを考えるなら公共工事はまだまだ必要なはずなのです。その中でも最も大切と思われるのがエネルギー自給率の改善です。

現在の日本のエネルギー自給率はわずか4%にすぎません。原子力発電を自給分に加える考え方がありますが(この場合は自給率18%)、日本はウランもすべてを輸入に頼っているためとても自給しているとは言えません。当然ながらこのような状況では、エネルギー資源が値上がりすれば日本の経済、日本の家計に深刻なダメージを与える事になります。家庭で普通に使われる電気はもちろんの事、身の回りにあるあらゆる商品はエネルギーを使用する事で生み出されています。鉄やアルミなどの金属資源だけでなく、エネルギー資源も私たちの生活にとって極めて重要なのです。

ところで人口13億人の中国が経済成長を続け、次には人口10億人のインドが経済成長を始めると何が起こるでしょう?それだけの人々が資源やエネルギーを消費しはじめると、資源価格が暴騰する事は火を見るより明らかです。資源価格が暴騰すれば国内では強烈なインフレが引き起こされる事になります。特にエネルギー自給率わずか4%の日本は大打撃を被る事になります。

日本は国土が鉱物資源に恵まれていませんから、鉱物はいくら頑張っても生産する事はできません。ですからリサイクル技術をさらに高める事で、輸入しなければならない鉱物資源の量を極限まで節約する事により、資源価格の暴騰に対抗するしかないでしょう。しかしエネルギーは全く事情が異なります。日本は地下資源にこそ恵まれませんでしたが、自然エネルギーには十分恵まれているのです。自然エネルギーを利用するのは何もソーラー発電だけではありません。本気で取り組めば、日本には風力や波力発電もあります。火山国である日本では地熱発電もまだまだ活用できます。また日本の有する排他的経済水域は世界の7番目の広さであり、この広大な海洋を活用すれば藻を利用したバイオエタノールの量産も可能です。このような眠ったままの自然エネルギーをどんどん開発する事で日本のエネルギー自給率を高める事は十分に可能なはずです。

そして、エネルギー自給率を高める事は、エネルギー資源価格の暴騰に対抗し、国内経済の安定とインフレの防止になるだけではありません。安定したエネルギー価格は安定した価格の製品を生産することができるのです。これは世界的にエネルギー価格の暴騰した環境下にあって、日本製品の輸出競争力を高める効果が期待できます。もし日本が豊富なエネルギーを安く供給できる国になれば、日本で生産した方がコストが安くなるとして、海外から製造業が日本に戻ってくる可能性があるかも知れません。これは「安価なエネルギー供給」という新たなインフラです。日本はエネルギー輸入国から輸出国への転身すら考えられるかも知れません。エネルギー需要は中国とインドの成長により莫大な市場となります。自然エネルギーは日本に永続的な富をもたらすかも知れないのです。

エネルギー輸出国への変身は遥か先の話としても、これからの日本を豊かで安定したものにするためにはエネルギー自給率を高めなければなりません。デフレギャップが年間40兆円あり、失業者も多い日本は、膨大な生産力が余ったままです。これはある意味でチャンスです。この公共事業は将来の日本を築くことができる上に、毎年無駄に失われるこれだけ大量の生産力が活用され、失業も解消されデフレも解消されるのです。生産力があふれ、デフレで通貨発行余力が膨大に残されている今こそ、毎年5兆円程度の通貨を発行し、その通貨発行益でこうした公共工事が行われるなら、日本に大きな変化がもたらされると思います。

2010年7月24日土曜日

経済政策のグランドプランについて

自分が政治家だったら、こんなマニフェストを作ってみたいです。

3つの柱
①企業力の強化
②購買力の強化
③金融・税制革命
3つの柱は相互に影響して相乗作用を生むことができる。

①企業力の強化
雇用の流動化促進による企業の弾性力強化
規制緩和による企業間競争を通じた競争力の強化
研究開発費に応じた法人税の引き下げにより企業の強みを育成
行過ぎた円高の積極的な是正による産業空洞化の阻止
(目的)
貿易黒字基調の維持を目的とする。
ギリシア問題などを見ると財政赤字などではなく、貿易赤字こそが危機の本質であることがわかる。資源を輸入に頼る日本では企業の輸出競争力は生命線となる。世界における圧倒的な競争力を維持するために企業力の強化が最も重要である。法人税もただ引き下げるのではなく、それを研究開発費に投じることを目的とさせる。貿易黒字傾向は為替市場における円を常に強める要因となり、それにより国内で円を継続的に発行し続けることができる。

②国民購買力の強化
  商品券・割引券(エコポイント含む)の配布
  雇用流動化促進による失業をフォローする
  社会保障の充実による社会不安の軽減
(目的)
内需拡大による国民生活の向上を目的とする。
企業の輸出競争力を高める必要はあるが、経済の過度の貿易黒字依存は貿易摩擦を引き起こすとともに、海外の経済状況に国内経済が振り回される原因となる。貿易はあくまでも「国内で調達不能な資源・商品を輸入するための活動」であって経済の主体ではない。日本国民が必要とする物資をいかに生産し、いかに分配するかが最も大切です。需要は消費者にカネがなければ拡大しないので、消費者におカネを供給することで購買力を高めます。財源は円を発行することで確保できる上、円を発行することは為替市場における円を弱める要因となり、円安傾向を導くことができる。また、企業競争力の強化のために雇用の流動化を促進すれば確実に失業が増える。ゆえに、失業がハンデとならないような十分な経済的支援がなければならない。失業の増加が内需の低迷の原因となってはならない。社会保障の充実も同様です。

③金融・税制革命
伝統的手法に囚われない金融政策による通貨循環の確保
金融資産課税と消費税による景気と通貨循環量のコントロール
(目的)
通貨循環量を経済の潜在成長力にあわせて拡大する。
経済(生産と消費)は循環する通貨量によって決まるため、通貨循環量を増やさねば経済は拡大しない。逆に通貨循環量を拡大すれば経済は技術の進歩にあわせて拡大する。古来より伝統的に通貨の供給は民間銀行の信用創造により「借金として」供給されてきたが、これがバブルの原因となり、信用収縮による回復不能なデフレも引き起こしている。通貨は経済成長に欠かすことができないインフラであるから、国家が通貨の供給を安定的に行う必要がある。この発行通貨は国民の購買力強化に利用される。同時に過度の貯蓄傾向が経済を低迷させるデフレの原因であり、発行された通貨をどんどん死にカネに替えてしまうことから、貯蓄に課税して再び通貨循環に組み入れる税制を導入して消費税を引き下げる。また、逆に消費加熱により生産力以上に通貨循環が増えるようなら金融資産への課税を引き下げて貯蓄傾向を促進し、消費税を引き上げて消費加熱を抑え、インフレを抑制できる。この両者の組み合わせを柱とする税制により金融によらない景気と物価のコントロールが可能となる。

基本はいたってシンプルでありまして、
①は、生産力の強化(生産)
②は、消費力の強化(分配)
③は、生産と分配をつなぐ通貨循環の維持拡大

経済の最も基本である3つを強化するだけであります。

バブルは通貨制度の宿命的帰結

バブルの原因をネットで調べてみても、本当の原因はほとんど出てきません。バブルの根本的な原因は現在の通貨制度そのものにあります。

バブルについては資産の転がしによる架空の値上がり益が問題とされています。つまり何も無いところからおカネを生み出しているというわけです。では、そのバブルで生まれるおカネはどこから来るのでしょうか?世の中のおカネが一定量しかなければ、バブルの初期の段階において、値上がりした資産を買うだけのおカネは世の中からなくなってしまいます。本来はこの時点でバブルは終わるはずです。

ところがバブルはどんどん膨らみ続けます。つまりおカネの量が増えているのです。では中央銀行が現金をバンバン刷っているのか?そうではありません。民間銀行が「信用」として作り出し、これを企業に「貸付」することによっておカネがどんどん増えるわけです。銀行の信用創造により、貸付として、すなわち人々の借金としておカネがどんどん供給されるためにバブルはどんどん成長します。しかも「信用」によって生まれるおカネは帳簿上で生まれたおカネに過ぎない、つまり「何も無いところから生まれたおカネ」なのです。だからおカネをいくらでも増やすことができるのです。すなわち、現在の通貨制度、銀行制度そのものがバブルなのです。

銀行は自己資本の何倍ものおカネを貸す事ができる、つまり保有している現金の何倍ものおカネを作り出して貸す事が出来ます。これがバブルの根本的な原因です。もし銀行が保有している現金の範囲内で貸し出しを行うのであれば、バブルは発生しないのです。
そして、信用は「何も無いところから生まれたおカネ」であるがゆえに、バブル崩壊とともに劇的な速度で「消えてなくなる」わけです。

ゆえに、私たちは信用ベースの経済ではなく、現金ベースの経済を志向すべきだと思います。

ギリシア問題は通貨統合の致命的欠陥を示している

ギリシア問題の根幹は生産力不足

ギリシア問題の根底にあるのは国内生産能力の不足です。なぜそんな事がいえるのか順に考えを進めます。ちなみに自分の勝手な推論でありますが。

輸入に頼るギリシアの供給

ギリシアは貿易赤字国です。貿易赤字ということは、ギリシア国内の生産だけで自国の人々の需要を満たすことが出来ないため、不足分を輸入に依存しているということであります。つまり国内の生産能力が不足した状態です。ところで、一般に貿易赤字が継続する場合、輸入代金の決済のために為替の取引が行われる為替市場において、その国の通貨は買い手より売り手が多くなることとなり、ギリシア通貨は値下がりを続けることになる。日本の貿易黒字が円高を招くのと逆の現象であります。すると自国の通貨が安くなり、輸入品が値上がりしてしまうことから、自然と輸入に歯止めがかかるのです。まともな国であれば、やがて国内の生産力を強化することで総需要の不足分を自国内で調達するようになる。また自国通貨が安くなることで輸出価格競争力が増し、輸出を増加し、その対価として自国で調達不能な資源などの輸入を再開することが出来るようになる。このように為替市場における調整機能が働くことで、自国通貨安を通じて輸入に歯止めがかかり、国内の生産力が強化されることで人々の需要を満たし、貿易赤字の問題も解決されるのです。また、そうでなければならないのです。

ユーロだから貿易赤字にストップがかからない

ところがユーロは複数国家で導入されていることから、為替市場におけるユーロの相場は自国だけでなく他国の貿易収支を加えて影響される。たとえばギリシアが貿易赤字でも、ドイツが貿易黒字であれば相殺されてしまう。だからユーロは値下がりせず、輸入品の価格が上昇することはない。すると輸入品が安いのだから買えば済むという判断になる。いつまでも貿易赤字を垂れ流しで輸入ができる。こうなると国内の産業を発展させて生産力を向上する必要はなくなってしまう。ところがここに罠がある。貿易赤字をそのまま続けると輸入代金の支払いのために国内のユーロが国外へどんどん流出して国内はユーロ不足、つまりおカネの無い状態となる。しかしユーロの発行権はユーロの中央銀行だけにあり、各国は通貨の発行権を剥奪されている。つまりギリシアは自国通貨であるはずのユーロを発行することはできない。すると、国内はどんどんおカネが不足してしまう。

自由貿易だから関税もかけられない

国内のカネが不足すると何が起こるのか?カネの不足している日本と同じ現象、つまりデフレが発生するのです。通貨循環の視点から考えてみましょう。ギリシアの人々はギリシア国内の企業で働いている。そこで受け取る賃金はその企業が生産した付加価値、つまりギリシアで生産された全商品の総額とほぼ同額である。その賃金は本来なら全額がギリシア国内で生産された商品を買い取る事に使われなければならない。そうすることで企業におカネが戻り、そのカネに基づいて生産が行われ、そのおカネが再び人々の賃金となるからであります。ところがその賃金の一部が輸入品の購入に向けられることで、海外へ流出して戻ってこなくなる。すると、本来は全額がギリシア国内の企業へ戻るはずのおカネが減ってしまう。つまり売れ残りが生じる。企業の収益が悪化する。また、企業へ戻ったおカネが次の段階でギリシアの人々の賃金となるのだから、賃金として支払うべきおカネの総額がすでに不足している。つまり、賃金が次第に減るのです。まさしくデフレ不況と同じであります。この場合、普通の国であれば、関税を用いて輸入を抑制すればよいのです。まず輸入を抑制して海外へのおカネの流出を防ぐ。そしてその間に不足している物資の国内生産力を高めること、あるいは別の輸出産業を育成することにより、貿易赤字を出さない形で国内の需要を満たすための政策を行うのです。ところが、ユーロ圏では関税の権利も剥奪されている。勝手に関税はかけられない。自由貿易圏だからであります。つまり、もはや海外へおカネが流出することを防ぐ手段はないのであります。このようにギリシアは出血多量により瀕死状態となる。

通貨の発行権を剥奪された国の破綻

ギリシア政府の苦悩は察するに余りあるのであります。通貨は発行できない、為替の調整機能は働かない、関税もかけられない。一方でデフレ不況により困窮した国民からは突き上げられる。そこでギリシア政府は国債の増額に踏み切るのです。しかし、ギリシア国内ではおカネが輸入のためにどんどん流出しているから、当然ながら貯蓄額も非常に低くなっている。国内で国債を調達しようとしても貯蓄が少ないのでできない。ここは苦しくても踏ん張らねばならないのですが、ギリシア政府は悪魔の誘惑に勝つことができなかった。外国への国債売却であります。ユーロは欧州通貨であり信用があるために、海外からユーロ建てで借金することができる。そのことに甘えてギリシアは国債を発行し続けたのです。しかしここに悪魔の罠がある。ギリシア国債は確かにギリシアの自国通貨建て国債ですが、通貨発行権が無い場合、これは外貨建て国債と同じ意味を持つのであります。

どういうことか?ユーロで借りたカネはユーロで返済しなければならないが、ギリシアには通貨の発行権は無い。たとえば日本のように独立した国家であれば通貨の発行権を有しているため、最悪の場合でも円建ての国債の返済は円を刷れば可能である。そんなことをすれば確かに国債は値下がりするが、債務の返済が不能になることは無い。国債の暴落にも一定の歯止めがかかる。しかし、ギリシアは通貨の発行権が無いため、ユーロは刷れない。ギリシアにとってユーロは自国通貨でありながら自国通貨ではないのだ。税収で返済が出来なくなった瞬間にデフォルト。即死です。自国通貨を奪われることは恐ろしい事なのです。

ギリシアのさらなる悲劇

国債のデフォルトは自国通貨の暴落を招きます。しかしこれで国が死んでしまうことは無い。むしろ自国通貨が暴落で激安になると、輸出価格競争力が回復してしまう。通貨暴落により一時的に国内経済は大混乱に陥るものの、やがて輸出が経済を牽引するようになる。先日読んだ本によれば、多くの経済破綻した国がこれにより数年で立ち直ってきているというのです。ロシアや韓国もまさしくそれです(両国とも近年に破綻している)。財政が破綻したからといって国が終わることは無い。自国通貨安による輸出拡大で国は順調に回復する。ところが、ギリシアの場合自国通貨はユーロであり、ユーロが暴落することは無い。つまり通貨暴落による為替安の恩恵を受けることは一切ない。このような状況で国内産業の活性化を図ることは極めて難しいと思われるのであります。

ギリシアが債務の返済を行うためには、ギリシアが貿易黒字化し、輸出によりユーロを稼ぎ、それで返済することがもっとも自然な方法であります。しかし、それが出来ないとなればギリシアはどうなってしまうのでしょう。方法を考えてみたのであります。およそこの3つしか無いような気がするのであります。

1:国民が保有しているユーロを増税で集めて返済。
2:信用創造で造る。投資を呼びこむ。
3:国土など貴重な資産を売り渡す。

1は、現在ギリシアで行われている対策で、このために国内では暴動が発生しているのです。

2は、無からカネを生む銀行の魔法を利用するのです。考えてみると、政府が通貨を発行できなくても、民間銀行が借金としてユーロを作り出して人々に貸すことは自由なはずです。となれば、何らかの形で資産価格の連続的上昇を引き起こすことができればよい。ぶっちゃけ「バブル」です。でも金利設定の権利も奪われているから無理ですね。

3は、もはや屈辱的でありますが、国土をカネ持ちに売り渡すのです。貴重な文化財を借金の返済のために外国人に売り渡すのです。投機などで巨万のあぶく銭を稼いでいる資産家に渡すのです。悲しい事にこれが資本主義の現実です。カネが主導する世界の真の姿です。

ニューズウィークのサイトに短いコラムがあったのであります。

ギリシャを「植民地化」するEU

http://newsweekjapan.jp/stories/world/2010/05/post-1252.php

貿易赤字国、つまり、輸出競争力が弱く、国内の生産力が不足しているギリシアのような国家がEUのように巨大な自由貿易経済圏に統合されると何が起こるのか?自由貿易経済圏というと、なにやら良さそうに聞こえるのでありますが、その実態は過酷な生存競争にあることを忘れてはならないのです。